✂芸事✂
赤羽の立呑BARで出会った
そのレモンサワーの帽子をかぶった
４０手前の小柄な男は
誰が名付けたか「師匠」と呼ばれる
「師匠」
学問・技術・遊芸を教える人
師匠は最終形態
なので、まだ浅い時間は
ケンジででしかなく
なまじっか、今の仕事のクオリティーや
いかに自分が大変な仕事をしてる
なんて話をしようものなら
皆、鼻白み
そんな話を聞きたくて
声をかけたわけではないと後悔する
ケンジは暫くすると
はしご酒へ出かける
そして数軒回って一周して帰ってくると
誰もが待っていた
師匠となっている
そう！ヘベレケ
見事なまでのヘベレケ
彼のInstagramには自分の記憶のない
居酒屋、ガールズバー、〆の富士そばのカツ丼の
投稿が毎度のこと
行った記憶はないけれど
写真があるのだから行っただろうと投稿
時に、肩こりがひどく
寝具屋さんで選びに選んだ枕を購入
それを持って飲み屋へ
僕が失くすから
この立呑BARへ置いて行けとなだめる
ここなら後日でも平気だから
ところが結果持ち歩き失くす
そしてなぜか写真は残り
Instagramに失くなった枕の投稿
時に知り合ったばかりの人と
カラオケ居酒屋へ
そこで常連無視の連続入力＆人の歌、歌う
１ヶ月出入り禁止
時に何軒はしごしたか分からないが
最後にたどり着いたガールズバーのカウンターで就寝
朝方高額請求
そんなことは日常茶飯事
だからこそ、師匠
良いところを探すのが難しいほどの
ダメなヘベレケ酔っぱらい
だが時に、多少の迷惑はかけているが
お酒とその場所を粋に嗜む
遊びに純粋なだけな男なのかもしれない
そんな師匠、数年前まだけんじだった頃
誕生日に立呑BARで常連から胴上げされる
その時、掛け声が「わっしょい」から
「師匠」となった噂を聞いたことがある
その掛け声をはじめた男は
遠方から来るロン毛の男だったとか、でないとか
「師匠」
学問・技術・遊芸を教える人
まだ弟子はいない
2019年11月7日
